【MAU】美術の歴史と鑑賞【課題2】

MAU通信 -美術の歴史と鑑賞

美術の歴史と鑑賞 第2課題

「中学校美術科の教科書への掲載を想定した鑑賞テーマを設定し、そのテーマで鑑賞する具体的な作品を4点から6点選びなさい。また、設定した鑑賞テーマをわかりやすく解説する文章を作成するとともに、その鑑賞の意義について論じなさい。」

レポートの参考にどうぞ。
全体的・部分的問わず、剽盗・転載はご遠慮ください。

1.鑑賞テーマ「世界の有名彫刻の鑑賞」

2.鑑賞作品とその基本データ

(1)王妃ネフェルティティ胸像
作者:トトメス
制作年:紀元前 1365年
技法材料:石灰岩
サイズ:48cm
ベルリンの国立博物館所蔵

(2)ミロ島のヴィーナス
作者:アンティオキアのアレクサンドロス
制作年:紀元前100年頃
技法材料:大理石
サイズ:202cm
ルーヴル美術館所蔵

(3)弥勒菩薩半跏像(宝冠弥勒)
作者:不明
制作年:7世紀頃
技法材料:アカマツ材
サイズ:137.5cm
広隆寺所蔵

(4)ダビデ像
作者:ミケランジェロ・ブオナローティ
制作年:1501-1504年
技法材料:大理石
サイズ:434cm
アカデミア美術館所蔵

(5)考える人
作者:オーギュスト・ロダン
制作年:1881年
技法材料:ブロンズ
サイズ:715×400×580mm
ロダン美術館所蔵

3.鑑賞テーマの解説

これら5つの彫刻は、世界的に有名な人物彫刻である。人物彫刻は人類の歴史と深い関わりがあり、太古の昔から継続して作品が生み出されている美術ジャンルである。その営みは現代まで続き、時には過去の作品を参考にしたり、摸刻することで彫刻家たちは腕を高めてきた。長い間愛され、有名彫刻として名高いこれら5つの彫刻だが、その素材・技法は全くばらばらであり、それぞれの時代の特色がうかがわれる。それぞれの彫刻にはどんな特徴が見られるか、また、共通点と違いはなにか、以下の説明文を参考に鑑賞してみよう。

「王妃ネフェルティティ胸像」
この胸像は古代エジプトの芸術作品のうちで最も多く模倣された作品の一つである。エジプト新王国時代の第18王朝のファラオだったアメンホテプ4世の正妃ネフェルティティをモデルとした彫刻である。顔面の左右の配置は完全に対称であり、今から約3000年前という時代からこのようなリアルな彫像が作られていたことに驚かされる。

「ミロ島のヴィーナス」
ギリシャ神話に登場する美の女神をモデルとしている。この彫刻は両手が紛失しており、今も本来の形はあきらかになっていない。ギリシャ彫刻の中期の作品によく見られるクラシック的な端正な顔立ち・体型と、後期の作品に見られるヘレニズム的な激しい体のねじれの二つの特徴を兼ね備えている。古代ギリシャ彫刻は長い間美の基準とされ、「ダビデ像」のミケランジェロにも強い影響を与えた。

「弥勒菩薩半跏像(宝冠弥勒)」
この作品は国宝彫刻の部第1号であり、またその姿がロダンの「考える人」を想起させることから、「東洋の詩人」の愛称をもつ。モデルである弥勒菩薩とはゴータマ・シッダッタの次にブッダとなることが約束された修行者で、シッダッタの入滅後56億7千万年後の未来に姿を現れて、多くの人々を救済するとされる。

「ダビデ像」
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロと共にルネサンス期の三大巨匠と謳われたミケランジェロの代表作である。ダビデが巨人ゴリアテとの戦いに臨む場面を力強く表現している。大きいサイズの彫刻はどうしても下から見上げると、頭が小さく見えてしまうため、意図的に頭部を大きくする美的調整が行われている。

「考える人」
思索にふける人物を描写した像として有名な作品である。作者であるロダンは19世紀を代表する彫刻家であり、『近代彫刻の父』と称される。ロダンは今までの基本であった古典や神話など型にはめられた表現を打ち破り、人間の内面をドラマチックに表現することを目指した彫刻家である。

4.本鑑賞の意義

世界的に有名な彫刻、という誰にでも親しみやすいものをテーマとした。中学生程度ならば殆どの彫刻に見覚えがあるものと思われる。これは、あまりに自分との繋がりのないものだと興味を持って貰えないだろうという考えからである。中学生位の、あまり美術に親しみのない、見覚えはあるが詳しいことは知らない読者に興味を持って貰えるよう、わかりやすい切り口から比較・解説を行う。具体的な比較・鑑賞の例としては、各々の彫刻の表情から読み取れる感情の考察、それぞれの人体のデフォルメの程度、ポーズの意味、素材、目的、モチーフ、作り方の比較などが上げられる。見ただけでは分からない基本的な情報や鑑賞のヒントを解説として記述する。
 これら時代の異なる5つの有名彫刻を視覚的に比較することで、彫刻にはどんな素材や作り方、表現があるのかを知り、また、それぞれの作られた時代、モデル、背景、目的を知ることで彫刻美術の歴史への理解を深める。本鑑賞は詳しい学びに至る一段階前の学習であり、広くおおまかに彫刻美術の世界を把握することに意義がある。いわば入門のための学習であり、各々の時代の代表作を鑑賞することで、長い歴史を持つ彫刻美術の潮流の一端に触れ、興味を持って貰うことを目的としている。

参考文献

  • 『西洋美術史』北澤洋子 武蔵野美術大学出版局 2006
  • 『カラー版西洋美術史』高階秀爾 美術出版社 1990
  • 『鑑賞のための西洋美術史入門』早坂優子 視覚デザイン研究所 2006
  • 『魅惑の仏像 弥勒菩薩』山本敦 毎日新聞社 2000
  • 『世界の彫刻1000の偉業』ジョセフ・マンカ 二玄社 2009

オススメの参考図書

↑↑ 課題1では教科書からの選択でしたが、課題2では完全に自由に選べますね。
得意分野が特になければ例によってこの本をパラパラ読んで決めるのが良いかと思います。
ある程度方向性が決まったら個別に情報収集していく流れになります。
こちらの書籍にはかなりの数の彫刻作品が掲載されているので、彫刻探したい方にオススメです。 ↓↓

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