【MAU】憲法【課題2】

-憲法 MAU通信

憲法 第2課題

「あなたが課題1で論じたテーマ・事例・論点について、自分の見解を組み立てて論じなさい。」

レポートの参考にどうぞ。
全体的・部分的問わず、剽盗・転載はご遠慮ください。

テーマ「性表現規制について」

 日本国憲法21条と刑法175条は表現の自由やわいせつ表現に関する裁判で対立することがある。それは「具体的にわいせつ物が何なのか定義されていないため」に起きる問題だと前回結論付けた。本レポートではこの二つの法が存在する意味を確認しつつ、わいせつ物の定義の在り方について考察していく。

 日本国憲法21条は表現の自由を守るためにある。表現の自由は、真に精神的自由を保障するためなくてはならないとされ、「民主主義の社会を支える不可欠の前提条件」とされている。(*1)刑法175条は「性的秩序を守り最小限度の性道徳を維持すること」(*2)を目的としており、「公衆の健全な性風俗ないし性秩序を保護法益」としている。保護法益とは「刑法自体が守ろうとしている利益」のことである。その利益は守られなければならないが、「法益が保護されるからといって、刑罰の対象が広く曖昧になれば、私たちは自由に行動することができず委縮してしまう」ため、刑法は「法益保護機能」と「自由保障機能」の両者のバランスをうまく保つことが求められる。違う切り口のため、事ある裁判で対立することが多い二つの法だが、以上の理由から両方を十分に考慮することが求められる。(*3)
 次に、問題となっているわいせつ物の定義の在り方について考える。時代によってわいせつ物の定義が変化していくのは納得できることである。チャタレー事件も、メイプルソープ事件も、わいせつ物の定義が争点となる点では似た事件であったが、社会通念の変化を受け違う結末を迎えている。それは何故か、何故わいせつの概念を不変のものにしてはいけないのか。それは人々が不快に思う程度、内容が時を重ねる毎に変化するためである。法は今を生きる人々のためのものである。昔の人々の意見は、参考になりこそすれ、基準にはならない。したがって、その時代時代で同じような事件があって、しかし裁判の結果が変わるのは至極当然のことである。論争は、今この時代にそれがわいせつ物かどうか、その時の社会通念に照らし合わし、慎重に議論をかさねるからこそ起こる。私はこれを必要な行為だと思う。
 その一方で、個人的に、わいせつ物を定義するにあたって表面的なものしか材料にしない判決の仕方や、現在問題となっている青少年健全育成条案、児童ポルノ規制法の刑罰の対象の広さの在り方には少々不満を感じている。作者も認め、明らかに性欲をかきたてることを目的としている作品を切り捨てるのなら理解できるが、美を体現すべく生みだされたアート作品が、表面的な受け取り方により、出禁等になるのは何とも心が痛い。強すぎる規制や制限は、いずれ美術の文化の成長そのものを阻害するものになるのではないかとも思える。また、「思想の自由市場」いう考え方がある。これは「社会的価値のある表現であれば、社会に出ることによって、幾多の批判をくぐり抜けながら生命力を保つだろう。逆に、その時代のムードに迎合したのぞき趣味的な表現にすぎないものであれば、市場の中ですぐに淘汰され消えるだろう。その判断は、本来、思想の自由市場、すなわち市民社会にゆだねられるべきものなので、公権力が干渉すべきではない」(*1)という内容である。この考えを元に規制を緩くしすぎてしまえば、それはまた問題になるであろうが、本来表現とはそういう一面があるということを持つことは大事であると私は考える。樋口ヒロユキ氏が青少年健全育成条例に対し、「権力者に芸術的価値を云々されて指示通りの作品を作り「これを見よ」と指定された作品を見て、一体何が面白かろうか」(*4)と述べたのも、これに準じたものであろう。相対性わいせつ概念のように、制作の意図をくみ取る意識や、本来芸術や表現は見る者1人1人が感じ取るものだ、という考えを持った上で、その作品に目を向けても良いように思う。人を不快にさせる表現がそこらに溢れるのはよろしくないことであると同意できるが、美術は大切な文化の一つである。芸術家の芽を摘む結果になるのは避けなければならない。

 わいせつ物の定義を広げることは、美術界全体を窒息させることに成りえる。規制を強くすれば75条設条の目的である「性的秩序を守り最小限度の性道徳を維持すること」(*4)を守ることは容易であろうが、強くし過ぎれば、その分日本の美術が死んでいくことになる。どちらかが圧迫されるような国にはなって欲しくない。二つの両立を目指す為に、二つの考えを尊重出来るように、社会通念は事ある毎に裁判で論じられ、変わり続けなければならないと考える。

参考文献

  • (*1) 新版 表現活動と法 志田陽子 武蔵野美術大学出版局 2009
  • (*2) 憲法判例を読む 芦部信喜 岩波セミナーブックス21 1987
  • (*3) 入門の法律 図解でわかる刑法 新保義隆 大沢美穂子 日本実業出版社 2006
  • (*4) トーキングヘッズ叢書NO.45 アトリエサード 書苑新社 2011

オススメの参考図書

↑↑芦部信喜氏の講義録で、憲法のあり方を巡る重要な判例が多く掲載されています。著作権法の課題でも使用できる内容ですので、手元に1冊置いておくことを勧めます。

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