社会学 第2課題
「課題1で選んだテーマを「コミュニケーション(相互行為)」という視点で再び論じなさい」
レポートの参考にどうぞ。
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テーマ「 労働と職場:フォーディズムからポストフォーディズムへ 」
本レポートでは、課題1で選んだ教科書第二部の「労働と職場(フォーディズムからポスト・フォーディズムへ)」の内容をコミュニケーションという視点から考えなおし、「マニュファクチュア」「フォーディズム」「ポスト・フォーディズム」のそれぞれの生産体制において、どのようなコミュニケーションが生まれているか考察する。
マニュファクチュアは工場に多くの労働者を集めてそれぞれの工程を分業で行う生産体制である。毎日同じ場所に工員を閉じ込めて単純労働を強制するこのシステムは、伝統的な農業労働のリズムや感覚、人間関係に慣れ親しんできた初期の工場労働者たちにとって受け容れがたいものだった。そのため労働者は監視役の目を盗んで作業をさぼったり、作業のやり方や速度を我流にこなしたり、ストライキ・サボタージュといった労働争議などで自分たちの立場を強調した。一方で資本家は利潤をあげるため労働者の心身状態などお構いなしに作業内容や量を押し付けようとしており、双方が自分の言い分をひかない状態であった。歩み寄りや理解が不十分であり、資本家と労働者との間にはコミュニケーションにおける壁があったが、一方で労働者間は団結し、共に賃金や労働条件をめぐって度々資本家と闘争した。
テイラーシステムの時代では、今まで工員の目分量で行われていた作業が「時間研究」と「動作研究」により行えなくなり、ノルマ達成だけが求められるようになった。「差別出来高給制度」によりこのシステムは大成功し世界中で生産を大幅に上昇させたが、ただ与えられた単純作業だけを淡々とこなすテイラーシステムはそこに労働者の意思や意欲が入り込む余地がない。そのため工員同士の交流も減り、職場から人間的なコミュニケーションを失わせる結果となった。フォードシステムもテイラーシステムと同様に労働者の感情を殺し、淡々と業務にはげむためのシステムである。完全に工程をベルトコンベアに依存しており、一日中ラインの前で単純作業を繰り返すテイラーシステムを上回る過酷さは、労働者からより強い反発を受けた。労働者間のコミュニケーションはより一層減り、資本家と労働者の間の関係は悪化し、労働争議は激化した。
それに対し経営者側であるフォードは1914年に日給を5ドルに、労働時間を8時間に変えるなど労働条件の改善を行うことで労働者の不満を緩和させようとしている。日本においては戦後まもなくに労働基準法・労働組合法・労働関係調整法からなる労働三法が施行され、労働者が経営者に対して交渉できるようになった。きつい仕事でも安心して労働者が業務にあたることができるよう社会保障の充実・労働条件の改善が進められ、昭和49年(1974)頃に最盛期を迎えていた労働争議の数はその後減少していっている。 (添付資料参照)マニュファクチュアの時代から経営者と労働者の間にあった壁が、法による交渉の場を持つことでようやく取り払わられた。
ポスト・フォーディズムは生活水準の向上が一通り行われ、消費者の好みが多様化したことに対応するシステムである。これには労働者が「自分の意思を生かせず一方的に命令された職務を実行させられるだけの労働環境にたいし、それまで以上に意義を申し立てるようになった」(*1)ことも起因する。ポスト・フォーディズム型産業のひとつである日本の企業「トヨタ」の生産方式(トヨティズム)は「生産現場の自働化」を特徴とする。これは労働者が班を組み、現場で働く者が複数の工程を自主的に判断してラインを動かしノルマをこなす。フォーディズムと異なりポスト・フォーディズムの労働現場には労働者同士の会話があり達成感がある。労働者に多能工として自主的に現場に参加しているという自覚が芽生えることは士気の向上にもつながっている。しかし一方で90年以降はどの企業もポスト・フォーディズムの路線を取り始めたことから国際競争が激化し、そのためにどの企業も賃金を減らすことでしか利益が出せなくなってきてしまっている。ポスト・フォーディズムの特徴であるフレキシブル化が人材雇用にまで及ぶようになり、それに合わせ生産ラインの機械化・外国移転が進められたことでリストラが多発し、現場からコミュニケーションどころか人材そのものが消える状況に追い込まれている。
このように一言に生産体制といっても、そのシステムにより生じているコミュニケーションは様々である。また17世紀のマニュファクチュアから今日までの生産現場の変遷は、経営者が「システムを提案・実行」し、それに対して労働者がストライキやサボタージュなどで「不平不満を主張」し、経営者が「それに対応した新しいシステムを提案・実行」するというコミュニケーションの流れによって生まれていることが認められる。
参考文献
- (*1)「社会学のまなざし」橋本梁司 武蔵野美術出版局 2004
- 「現代ビジネスの革新者たち テイラー、フォードからドラッカーまで」D・A・レン R・G・グリーンウッド ミネルヴァ書房 2000
- 「ものづくりの寓話 フォードからトヨタへ」和田一夫 名古屋大学出版会 2009
- 「フォーディズム―大量生産と20世紀の産業・文化―」R・バチュラー 日本経済評論社 1998
オススメの参考図書
↑↑前回紹介した書籍にプラスして、今回はこちらの本も使いました。
あと、厚生労働省HPなんかも参照しています。