【MAU】美術論【課題1】

MAU通信 -美術論

美術論 第1課題

「やまと絵の定義の変遷についてまとめなさい。」

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レポート本文

 やまと絵は日本絵画の概念の1つである。「やまと絵」「倭絵」「和絵」などとも表記される。平安時代に誕生し、今日の美術文化に大きな影響を与えているやまと絵の定義の変遷について、以下にまとめる。

 やまと絵が誕生したのは平安時代の中期であるとされる。奈良時代から平安初期にかけ、日本は遣唐使などの存在を通じて中国・唐の高度に進んだ文化を学び、手本としていた。美術文化においても同様で、唐の絵画を真似した「唐絵」が描かれた。(中国から舶載された唐の絵そのものを指す場合もある)だが、894年に遣唐使の中止を迎え、907年に唐が崩壊したことから、その影響力は弱くなり、10世紀頃には日本独自の国風文化が栄えるようになった。やまと絵は唐という手本・拠り所を失ったわが国が、自らの手で自らの日本オリジナルの風景、風俗、物語に取材した固有の美術文化を作り出したことが始まりである。以後、中国の事物を描くにしても今までのように中国画そのままの真似ではなく、例えば「史記」に出てくる孟嘗君の肖像や、「文選」や「白氏文集」の詩文を主題とした屏風絵など、本家本元の中国には見当たらない種類の唐絵が作られるようになった。
 やまと絵は唐絵(中国風絵画)に対する呼称である。中国の影響を受け、描かれた中国風絵画の「唐絵」と区別するため用いられた。やまと絵の定義は、時代によって意味・用法が異っている。平安時代から14世紀前後までは、画題についての概念であり、日本列島における故事・風景などを主題とした絵画のことであった。対立概念としての「唐絵」は唐(中国)の故事・風景などに主題をとったものである。つまり、この時のやまと絵はあくまで主題の分類を示す言葉で、その様式技法は関係がない。両者とも墨や岩絵具を主な画材とした。
 初期のやまと絵は屏風や障子など画面の大きいものにかかれることが多かったが、12世紀頃より「源氏物語絵巻」をはじめとする絵巻物にその中心が移っていく。絵巻物は「絵因果経」などの絵入り経巻や中国から輸入した画巻に発想を得て作られた。「引き目鉤鼻」や「吹抜屋台」など独特な表現が生まれた。
 鎌倉時代以降、中国(栄・元)から新たに水墨画がもたらされ、これらを「漢画」と呼び、やまと絵に代わり日本絵画の主流となった。主題の分類を示す言葉だったやまと絵は、14世紀以降、様式や流派までをも含む言葉へと変化していく。漢画は描く画題も中国由来のものが多く、豪壮で格式ばったところが武家に好まれた。狩野派を中心に室町時代以後の画壇を支配することとなる。狩野派は日本美術史上最大の派閥で、足利家、織田信長、豊臣秀吉、徳川家と、権力者のお抱え絵師であり、実に400年もの間繁栄した。狩野派をはじめ、如拙・周文・雪舟など、宋元画の水墨技法を中心とした絵画様式の流れをくむ画家を漢画派と呼ぶ。
 一方、やまと絵の伝統は平安時代から延々と続いてきた穏健な土佐派によって保持された。王朝絵巻の伝統を引き継いでいるため、人物は引き目鉤鼻で描かれ、画題も「源氏物語」や「伊勢物語」といった平安文学を好んで描いた。主な支援者は公家である。この時代のやまと絵が唐時代の絵画を消化した第一段の日本画であるとすれば、漢画は次代の中国画に影響された第二段の日本画であるといえる。ただし、中世後半から近世初頭にかけては、技法の上での「やまと絵」と「漢画」の境界線はアバウトなものとなる。15世紀から16世紀に活躍した土佐光茂は中国宋代の技法を自在に操った(例として牧馬図屏風など)し、漢画派の代表ともいえる狩野派の画家たちも「やまと絵」の摂取を積極的に試みている。
 江戸時代になると、俵屋宗達がやまと絵の伝統を近世的な感覚で再興し、その流れは尾形光琳ら「琳派」の装飾画として華やかな結実を見せる。一方、時を同じくして明・清の中国絵画の影響をうけ、文人画や写生画の新たな漢画が発生し、ヨーロッパ絵画の導入を試みた洋風画(蘭画、紅毛画)も一部にひろまっている。外国絵画からの影響下に起こった第三段の日本絵画は、そのように洋の東西に分かれて複雑な様相を示した。
 明治維新後は日本の画壇に大変化が訪れる。1870年代にヨーロッパからもたらされた油彩画、すなわち西洋絵画との本格的な対応が明らかとなり、それまでのやまと絵、漢画、唐画などの流れをすべてひっくるめて、「日本画」としてくくり、対になる西洋風絵画という意味の「洋画」と明らかに区別することとなった。展覧会というコンテストに画家が参加する時代となり、いままで権力者に仕えていたグループは職を失い、個人で絵を描くようになる。明治20年には東京美術学校が開校し、従来の師と弟子という関係から、教師と学生という教育の関係に変化した。

 一言にやまと絵と言ってもその意味は広く、時代によって定義は大きく変化する。しかしそこには「日本の情景を描くこと」という一貫のテーマがある。やまと絵には、その時々を生きる人たちの日本のリアルな光景が、見事に表現されている。

参考文献

  • 「すぐわかる日本の絵画改訂版」守屋正彦 東京美術 2012
  • 「知識ゼロからの日本絵画入門」安河内眞美 幻冬舎 2009
  • 「日本の美術(やまと絵)」家永三郎 平凡社 1964
  • 「別冊太陽 日本のこころ201 やまと絵 日本絵画の原点」湯原公浩 平凡社 2012
  • 「増補新装 カラー版日本美術史」辻惟雄 美術出版局 2003
  • 「日本の美・発見Ⅱ やまと絵の譜」出光美術館 2009

オススメの参考図書

↑↑ 色々読みましたが、まぁとりあえずこの辺りですかね!書籍によって書き方や表現が変わりますから、いろいろ読むのが良いと思います。

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