【MAU】西洋美術史2【課題1】

MAU通信 -西洋美術史2

西洋美術史2 第1課題

「ルネサンス、マニエリスム、バロック、ロココ、新古典主義、ロマン主義のうち一つを選び、その芸術的特質と歴史的背景について論じなさい。」

レポートの参考にどうぞ。
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テーマ「ルネサンス」

 ルネサンス美術はジョットが活躍する「早期ルネサンス」、ドナテッロ、マザッチョ、ブルネレスキらが活躍する「初期ルネサンス」、ミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ラファエロらが活躍する「盛期ルネサンス」にわけることができるとされる。今回はそのうち、盛期ルネサンスに活躍した三人に注目する。

 レオナルドらが生きた時代では絵画や彫刻はまだ、学芸の分野とは見なされていなかった。画家や彫刻家は装飾品を制作する手仕事の職人にすぎず、社会的地位も高くはなかったという。それは哲学や詩学、数学などに比べ、芸術は知的・理論的基礎付けのない非精神的な労働だと見なされていたためである。しかしレオナルド・ダ・ヴィンチにとって絵画とは、当時の諸芸術に劣るどころかそれらに勝る最も高度な知的営みだった。絵画には基本として数学や物理学、化学や自然学など様々な豊富な知識が必要と考えたためである。
 「モナ・リザ」はレオナルド・ダ・ヴィンチの描いた世界で最も有名な作品である。スケールの大きな画面構成、立体描写の繊細さ、だまし絵めいた雰囲気など、さまざまな点において斬新であったこの作品は、現在に至るまで人々を魅了し続け、研究の対象となってきた。弟子をはじめ、多くの画家によって模写された。教皇や貴族など、地位の高くない人物の肖像画が描かれるようになったのはこの時代からであり、本作のモデルもフィレンツェの名士、ジョコンダの妻であるというのが定説である。この絵に使われたスフマート(深みやボリューム、形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法)という技法はレオナルドが作りだしたものである。レオナルドはルネサンス期を代表する博学者であり、万能の才に恵まれ、あらゆるジャンルの研究をした。芸術では絵画を第一のものと位置づけ、アルベルティの絵画論を継承して人物の身振りや感情表現を研究した。レオナルドは森羅万象を解き明かそうと試み、それを絵画の世界で表現しようとする、科学者の視点を持った全く新しい芸術家であった。
 ミケランジェロはルネサンス期を代表する彫刻家であり、また画家、建築家、詩人の側面も持つ。1490年から1564年頃までほぼ1世紀近く制作を続けた。それは宗教改革の中であり、中世的なキリスト教信仰が決定的に崩壊した時期でもある。代表作は「ダビデ像」である。人間の力強さや美しさの象徴ともみなされる作品であり、芸術の歴史における最も有名な作品のひとつと言える。彼はメディチ家の古代彫刻コレクションを見て学んだとされ、感情がこもり、たくましい肉体をもったヘレニズム彫刻に感銘を受けたという。彼の作品は人間の持つ力強さが神々しく、美しく表現されており、その美の在り方はダビデ像の他、システィーナ礼拝堂の天井画「天地創造」などにも見ることができる。彼の専門は本来彫刻であるが、様々な分野で優れた芸術作品を残したその多才さから、レオナルド・ダ・ヴィンチと同じくルネサンス期の典型的な「万能人」と呼ばれることもある。ミケランジェロの作品に見られる情熱的で独特の作風は後続の芸術家たちの模範となり、盛期ルネサンスの次の西洋芸術運動であるマニエリスムとなって結実していった。
 ラファエロは、ルネサンスを代表する画家、建築家である。ラファエロの作品はその明確さと分かりやすい構成とともに、雄大な人間性を謳う新プラトン主義を美術作品に昇華したとして高く評価されている。前記二人の天才達の技を目の当たりにしたラファエロは、レオナルドからは絵の構成の重要性を、ミケランジェロからは人体の構造をよく理解することの重要性を学んだという。彼の代表作は一連の聖母子像である。あたたかく慈愛に満ちたやわらかな描写がされている。彼は「聖母子の画家」と呼ばれるほど、このテーマの作品の人気が高く、多くの注文が殺到したという。師のペルジーノ風の優美な美しい女性像の表現に加え、レオナルドから影響を受けた彼はレオナルドのピラミッド型の構図と人物の内面描写を自らの絵に取り入れた。作品自体の影響力こそミケランジェロに及ばなかったものの、良いところだけを集めたような彼の古典主義的理想美は、後世の画家たちに長く手本とされた。

 レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロは三大巨匠とも呼ばれ、ルネサンス美術だけに留まらず、西洋美術の代表的な芸術家とされる。彼らが活躍した期間は30年程度であるが、彼らの作品はルネサンスの規範だった古代と自然さえ凌駕し、彼らの芸術世界はこれ以上ないほど完成されたものであった。彼らの美意識は今日に至るまで、後の美術界に多大な影響を与え続けている。

参考文献

  • 「イラストで読むルネサンスの巨匠たち」杉全美帆子 河出書房新社 2010
  • 「西洋美術の歴史」H・W・ジャンソン、アンソニー・F・ジャンソン 創元社 2001
  • 「鑑賞のための西洋美術史入門」早坂優子 視覚デザイン研究所 2006
  • 「西洋美術史」北澤洋子 武蔵野美術大学出版局 2006
  • 「ミケランジェロ」ルッツ・ホイジンガ― 東京書籍株式会社 1996
  • 「レオナルド・ダヴィンチ展」レオナルド・ダ・ヴィンチ展実行委員会 2005

オススメの参考図書

↑↑ルネサンスをテーマにレポートを書く場合に限定されますが、良い本なので紹介します。
レオナルドやミケランジェロといった有名芸術家が小エピソードなどと共にコミカルなイラストで紹介されている書籍です。かなり軽い読み物なのでこれ一冊でレポートを書くのは不可能ですが、時代の雰囲気や大雑把な人間関係などが把握できるのでルネサンス期の勉強の導入書としてオススメです。

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