社会学 第1課題
「 教科書のいずれかの部から任意の1つの章を選び、そのテーマについて理解したことを具体例などをあげながら説明する。」
レポートの参考にどうぞ。
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テーマ「 労働と職場:フォーディズムからポストフォーディズムへ 」
私は教科書から第二部の「労働と職場」の章に興味を抱いた。17世紀以前に多く行われてきたマニュファクチュア、18世紀の産業革命を経て、現代に至るまでモノ作りのシステムがどのように変化してきたのかまとめる。
17世紀では、主にイギリスの農村部でマニュファクチュアと呼ばれる工場制手工業が行われていた。これは地主や商人が地域に工場を設け、そこに多くの労働者を集めて作業に従事させるシステムである。それぞれの工程を分業でおこない、労働時間を規則化することで作業効率が向上し、生産能力を飛躍的に上げることができた。しかし一方でこの作業体制は「管理者が適切な作業環境を作っていない」ことから生まれた問題をはらんでいた。①能率や出来高を上げると多数の工員が失業する、という誤解が工員仲間に行き渡っていること②そのため工員は意図的に怠けないと自分の利益を守れないと感じていること③また仕事がそれぞれの工員の目分量でおこなわれているため、作業に無駄が多すぎること、の三つである。
「テイラーシステム」はフレデリック・W・テイラーが、このようなマニュファクチュアの現状を実際に目のあたりにし、上記の3つの問題を解決しようとして生まれた生産体制である。このシステムでは「時間研究」「動作研究」「差別出来高給制度」という方法を導入した。「時間研究」と「動作研究」により、作業にかかる平均的な時間と理想的な方法を決め、徹底したマニュアルの作成とノルマの設定を行い、「指導票」として労働者に示した。マニュアル通りの働きをした者には高賃金を、できなかった者には低賃金を与える「差別出来高給制度」により、このシステムは大成功し、世界中で生産を大幅に上昇させた。しかし経営者から見れば有意義であったこの管理システムは、一方で労働者からの強い反発を受けた。毎日同じ作業を休むことなく続けなければならないこのシステムには精神的・肉体的なゆとりが少なく、あちこちでストライキ・反対運動を生むこととなった。またテイラーの理念をより具体的な方法で実現させた生産体制として「フォードシステム」がある。発案者のヘンリー・フォードはテイラーシステム同様、時間研究と動作研究をしたうえで、生産をT型車一本にしぼり、工場にベルトコンベアに導入し、低価格の自動車大量生産を実現させた。テイラーシステムと異なる点は、作業がより簡単になったことで未熟練者でも行動することが出来る点と、労働者ではなくベルトコンベアが作業のやり方と速度を決める点である。一日中ラインの前で単純作業を繰り返す、テイラーシステムを上回る過酷さは労働者からより強い反発を受けた。離職率も非常に高かったことから、1914年に日給を5ドルに、労働時間を8時間に変えるなど、労働条件の改善が行われた。このように、非常に過酷な労働が深刻な問題となっていたテイラーシステムやフォードシステムであるが、第二次世界大戦後、日本をはじめとする世界の先進産業諸国に広く受け入れられていくようになる。日本においてアメリカ的な生活様式の「豊かさ」は魅力的にうつり、徐々に労働条件が緩和されることで社会に受け入れられたのである。労働基準法、労働組合法、労働関係調整法からなる労働三法が施行され、労働条件の改善や社会保障制度が充実したことから、労働者はきつい仕事でも安心して業務にあたることができるようになり、その「フォーディズム」と呼ばれる体制は1950年~1970年代はじめに日本に高度経済成長をもたらした。しかし1970年後半頃からフォーディズムの品種大量生産はあきられ、伸び悩むようになる。それは一通り生活水準の向上が行われ、消費者の好みが多様化し始めたことに起因する。新期の購入が減り、買い替えが中心となる「市場の成熟化」が起き、二代目の車を飼う人は、少々根が張っても以前よりもスタイルのいい高級感のある車を求めるようになった。また大量生産による公害問題や環境破壊が深刻化し、これらの改善が急速に求められた。
そのような時代の変化を受け、生まれたのが「ポスト・フォーディズム」である。これは「消費者のニーズに応じた多品種少量生産」と「労働者の参加と多能化の実現」を特徴とする。日本の企業「トヨタ」の生産方式(トヨティズム)はポスト・フォーディズム型産業のひとつで、必要なものを必要な時に必要なだけ作る「ジャストインタイム方式」、労働者が班を組み、複数の工程を自主的に判断してこなす「生産現場の自働化」が導入された。コスト削減と徹底した合理化が進められ、生産体制をフレキシブルに変えていくこれらの試みは成功し、世界から大いに注目された。しかし1990年以降はどの企業もポスト・フォーディズムの路線を取り始めたことから、国際競争は激化し、各国の企業は容易に収益を上げることができなくなってくる。そのためにどの企業も賃金を減らすことでしか利益が出せなくなってきてしまい、生産ラインの機械化が進められ、賃金コストの低い国や地域を求めて工場は外国に移転し、自国の産業は空洞化が進んだ。フレキシブル化が雇用にまで進んだことでリストラが多発する状況が生まれてしまった。
このように、無駄を減らし商品のクオリティを上げ単価を下げるというのが17世紀から今日までモノ作りが目指してきた目標である。機械の導入は生産体制を格段に効率化させた。それらは市民の生活をより良く変えていったが、そのために労働者が解雇され、軽視される現状を生んでいったといえる。
参考文献
- 「ものづくりの寓話 フォードからトヨタへ」和田一夫 名古屋大学出版会 2009
- 「現代ビジネスの革新者たち テイラー、フォードからドラッカーまで」D・A・レン R・G・グリーンウッド ミネルヴァ書房 2000
- 「フォーディズム―大量生産と20世紀の産業・文化―」R・バチュラー 日本経済評論社 1998
オススメの参考図書
↑↑ひたすらに文章が堅くて読むのが大変だった社会学。水乃と同じテーマで書く場合は上の二冊がおすすめです。添付資料のデータもここから抜き取りました。