【MAU】西洋美術史1【課題1】

MAU通信 -西洋美術史1

西洋美術史1 第1課題

「古代美術では、人体を表現する場合、その意図や目的によってどのような形や手法を選んだか?①エジプト美術、②メソポタミア美術、③エーゲ美術、④古代ギリシア、⑤エトルリアとローマの美術、それぞれから作品を1点ずつ挙げ、お互いの影響関係についても触れながら、比較して論じなさい。」

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レポート本文

 今回西洋の古代美術を学習するにあたり、エジプト美術から「ラー・ヘテプとネフェルトの像」、メソポタミア美術から「アブ神殿出土の人像」、エーゲ美術から「偶像(アルゴモス出土)」、古代ギリシアから「クリテイオスの少年」、エトルリアとローマの美術から「プリマ・ポルタのアウグストゥス」を選びその観察を行った。下記にその結果を元に考察を行う。

 一つ目の「ラー・ヘテプとネフェルトの像」は写実的な表現が特徴である。古代エジプトでは霊魂は不滅と考えられ、再生のためにミイラとして肉体が残された。この作品も死者が再生する際の器としての役割があるため、写実的であり墓主に似せている。ほぼ左右対称に作られており、素材は石灰岩である。秩序ある人体作りを行おうとしていることがわかる。二つ目のアブ神殿出土の人像は幾何学的な外見が特徴である。一番大きな像は植物の神アブを表しており、次に大きいのが母像、その他は神官と礼拝者とされる。神像はそのものが大きいことに加え瞳孔の直径が大きい。これは、当時神々は実際にそれぞれの像の中に宿っていると信じられており、かつ「魂の窓」と呼ばれるその眼を見ることで神と交信することができると考えられていたからである。そのため、交信に必要な眼から注目が離れぬよう身体や顔は単純化された。三つ目の偶像(アルゴモス出土)の素材は大理石で、幾何学的なごくシンプルな表現が特徴である。簡潔に人体の特徴を掴んでおり、純粋形体の美しさを素直に表現している。この文明でのみ、このようなしなやかな少女の裸婦の彫像が存在する。四つ目のクリティオスの少年はクラシック期初期のもので、等身大よりわずかに小さい大理石の彫像である。その身体の重心は均等ではなく左足にやや重心が多くかかり、上半身にもわずかに動きが感じられる。これはアルカイック期とは明らかに違う特徴であり、次に続く写実的で生命感あふれることが特徴であるヘレニズム期へのつながりを感じさせる。五つ目のプリマ・ポルタのアウグストゥスはギリシャの紀元前5世紀のポリュクレイトスの「槍をかつぐ人」がモデルになっている彫像である。コントラポストをはじめとするギリシャ彫刻の特徴を受け継いでおり、それにローマ的価値をつけ加えていることが分かる。頭部は理想化されているが、「ギリシャ風にされた」といったほうが適切である。細部や表面のこだわりが強く、とくに瞳や髪の表現にはドリルを多くもちい個人の特徴をはっきりと示している。軍事的指導者としての立場を強調し、自らを神格化している。
 次に五つの文化の美術作品の目的と表現手段に着目して述べる。エジプト美術は身代わりのために彫刻を作った。観賞用ではなく死後のための実用品である。王族や神々の像を中心に、官僚や神官、兵士や召使などの彫像がある。男女ともに制作され、その目的から写実的な表現がされた。メソポタミア美術はシュメール文化の聖職者を中心とする支配者階級の美術と、アッシリアの国家宣伝の為の美術が目立つ。神殿に捧げられた像は大きく見開いた目と単純化された身体表現が特徴である。エジプト彫刻が全体に直線や四角の原理に支配されているのに比べ、円や円筒形が基本の要素となっており、女性像は殆ど存在しない。エーゲ美術はその多くが小さい像で、ごく単純化された人体表現が特徴である。死者とともに埋葬された多くの彫像が両手を組んで立つ裸婦像で、おそらく母性と豊餃の女神を表していると考えられる。後にピカソなどの画家に影響を与えることとなり、その基盤は古代ギリシャ美術へと引き継がれる。古代ギリシャでは初めて生きている人間が表現されるようになった。幾何学的な彫像から、写実的・生の表現へと変化を遂げていく。後世の手本となる様式である。神話や伝説をモデルにしたものが多い。女性の像も女神の像という形で多く作られ、アルカイック期に生まれた衣文(ドレーパリー)は後の美術をさらに豊かなものにした。また、まったく支えのない独立像が制作されたのもこの時である。エトルリアとローマの美術は国家の宣伝や人物を称えるための彫像である。ギリシャ美術の特徴を強く引き継いでおり、写実的で生命感にあふれる。神話や伝説よりも歴史や事実のほうに強く関心をしめしており、この時代の彫像は一種のドキュメンタリーとも言える。国家の栄光や英雄の賛美が重視され、それを記録し宣伝するという性格が強い。観賞用としての彫像の役割を増していく。

 古代ギリシャから古代ローマへのつながりはとてもわかりやすい。エジプトでは約三千年間表現の形式が変わらなかったのに比べ、激動の変化を遂げていることがわかる。エジプト文化とメソポタミア文化は土地的にも時系列的にも影響し合っていてもおかしくない条件でありながら、お互いに強く独自性を保っている。また、彫像というものがエジプトにおいては身代わり、メソポタミアにおいては神の器という実用品として制作されていたものが、ギリシャ・ローマを経て、観賞用としての側面を強くしていく。幾何学的に、存在を表すだけの存在は、やがて彫像そのものに美しさを追求するためのものに姿を変えている。

オススメの参考図書

↑↑ 美術史の基本が浅く広く書いてあります。古代も網羅されているので、西洋美術史I履修のタイミングで買っておくのがオススメです。というかもう持ってますかね笑
西洋美術史IIでも使いました。

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